●8月10日(火)
ホテルに入るために荷造りをすることに。
色々とネットで情報を集めたものの、その人の体調などにより着替えの量とかが変わるのでなんとも荷づくりが決まらない。
東京都の場合、僕がホテルに入った時点では
・東京都のサイトに、宿泊療養で持ってきてくれと言うものが記載されている。
※【新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養について】
・ホテルのランドリーは使えない。
・買い出しも差し入れ以外不可。つまり、アマゾンとか通販で足りないものの取り寄せはできない。
・医者も同様。処方薬は基本、どうにもならず。
※後に『自宅療養中に訪問医師を頼む』と言う手段を知るが後の祭り。
・基本、食事は3食用意されたお弁当。食欲がないひと用に、パンとかゼリーもリクエストできる。
とのこと。
なので、とりあえず
・Tシャツ3枚
・スエットパンツ 2枚
・ステテコ(ユニクロの薄手ハーフパンツ) 2枚
・下着 5枚
こんな感じで用意し、歯ブラシとか髭剃りのいわゆる出張セット。それとタブレットPCとACアダプタなど用意してキャリーケースにぶち込みます。
13時、ドライバーから連絡。
自宅で飼っている柴犬たちとしばしの別れ。
存分にモフってから出発。当人たちも何かわかるのか、妙に懐いて後ろ髪を引かれます。
家のちょっと先に車が停められる場所があるので、そこで落ち合うことに。
幸い、ご近所の誰ともすれ違わず、誰とも会わず。
ドライバーさん、いわゆる防護服で完全武装かと思いきや、まさかのマスクのみの軽装。
車は、わナンバーの日産セレナ。運転席と後席の間に透明のポリビニールシートで仕切りがしてある感じ。
考えてみれば、防護服着たまま裏道運転は難易度高いもんなあとおもいつつ、乗車。
『途中でもう一人乗せますので、後ろのシートにお願いします』
とのことなので、3列目に。
ホテルに行く途中、いかにも若そうな男子をピックアップ。咳が止まらず苦しそう。
当然2列目に座り咳をゲホゲホしているが、ドライバーさん大丈夫かな……?
オリンピック期間ですが、特に規制などないルートでスムーズにホテルに到着。
一切口を聞かず、黙々とロビーに移動。
ロビーに入ると、カードキーと各種書類。そしてお待ちかねのパルスオキシメーターが入ったA4サイズの封筒があり、それを持って各自の部屋へ移動。
そこで荷ほどきしていると、看護師さんから内線で連絡など入り色々な問診を。
『パルスオキシメーターは指にはめ、しばらく安静にして数字を見てください』
なんと、自前のメーターを持っていたのにこの情報を初めて知りました!
というか、すぐに数字読んでました。
それでいつも低めに数字がでてたのか、ウチのは……?
荷ほどきしつつ、自宅に電話。
一息ついて、部屋を色々と見回す。
綺麗な部屋で広さもそこそこ。ベッドもセミダブル。
個人的にはリゾート気分です。
ホテルなので、電話もネットも自由。フリーWi-Fiもあり。
テレビもデカい画面で見放題。
ある意味、自宅よりかなり快適と言え
(ホテル療養、できてよかった……)
と思ったり。
ホテル内では食事を取りに行く以外の外出は禁止。部屋から一歩も出られず。
部屋の清掃、リネン類の交換などは一切なし。アメニティ類は食事と同じスペースに用意してあるので、必要な分をピックアップ。
基本、交流はゼロ。
まあ、宿泊療養の性質を考えるとそれはそーだという気持ちに。
封筒の中には色々な注意書きに混ざって、小池都知事のメッセージも。
これはどうも、ご丁寧に。
そして、ホテル側からのメッセージも。
ほっこりと嬉しい。
頑張ろうと言う気持ちになりますね。
健康管理は毎日2回、7時と16時に検温とパルスオキシメーターでSpO2を測定。
それをスマホアプリに入力する仕組み。
僕の場合、熱が少しあるのと基礎疾患(デブ)もあるので、
『それ以外に12時と20時の1日4回の入力をお願いします』
と言うことに。
丁寧に見てもらえるのはありがたいなあとおもいつつ、手間かけて申し訳ないなとも。
しかし、ホテルに入って看護師さんと内線ですぐに繋がる環境になったことは実に頼もしい。
自宅療養中だと、なかなか繋がらない保健所への電話が唯一の生命線だったので。
この日は熱は37度ちょい。SpO2は95~96と言う感じ。
食欲も問題なく、弁当完食。一口ヒレカツ弁当。美味。
割合に穏やかな療養初日になりました。
●8月11日(水)
家族から連絡
『保健所から連絡あった。全員陰性』
これ以上ない嬉しい報せ。
あまりに嬉しかったので、この日の記憶が薄い。
弁当は昼ハンバーグ、夜フライ。
基本、茶色。
普段から『茶色い食べ物はヘルシー』とか言っていた自分の主張が正しかったことを知ります。
一歩も動かないので、正直腹はまったく減りません。
とはいえ、食べないと体力付かないと思い完食。
カロリーはヘルシーです。
このあたりから、横になると咳が立て続けに出て夜眠れなくなります。
SpO2は95~96だけど、呼吸を深く吸えなくなっている感じに。
無理に吸うと、猛烈に咳こむ。咳と一緒に痰も出る。血痰。
(治らんな、なかなか……)
身体を横にして、いわゆる回復体位にすると咳が止まることを発見。
それ以外は特に何もないので、就寝。
腕、しびれました。
●8月12日(木)
知人から『足りないものを差し入れるから、連絡くれ』と電話あり。
ありがたく、荷物に入れ忘れた爪切りと甘いお菓子。カロナールを依頼。
差し入れの場合、前日までにホテルに連絡しておく必要あり。
明日の午後来ますと伝える。これで妙に気になっていた足の爪が切れるぞ。
そして、昼の弁当にサバの味噌煮が出ました。
僕は体力ないときに青魚を食べると腹を壊すことがあるのですが、見事に的中。
幸い大したことなく少し下した程度で済みましたが、これを境に食欲が全くなくなってしまいます。
完全に僕の用心不足です……
夜は食べられず。だって、揚げ物全開弁当なんですもの。
『お弁当が無理な人のために』と置いてあった第2の選択肢、カップ焼きそばを一つ貰います。
(これ食べれるなら、弁当も食べれるのでは?)
とおもいつつ。
SpO2は95前後。
咳は相変わらず良く出ます。血痰も。
●8月13日(金)
朝は前日の夜を抜いたおかげで少し胃腸が落ち着いたのか、ほぼ完食。
サーモンのマリネが出たので、それだけ用心して残します。
食事を取りに行くときにあらためて見ると。
思いのほか多い、小さな子供連れの人々。
多分、一家まとめて陽性になってしまったのでしょうが……
子どもには感染しない的なムード、最初の時にどことなくありましたよね?
全然そんなことないぞ、結構辛そうだぞ、と。
というか。
子どもにはなにより、一日中ビジネスホテルの部屋の中で過ごすのが辛いだろうなあと。
可哀そうだけど、頑張れがんばれ。
午後、差し入れを預けたとの連絡。
夕食時に受け取る仕組みになっているので、夕食まで待ちます。
そして、キャラメルコーンと念願の爪切りゲット。
焼きそばの備蓄が増えました。
存分に爪を切って、スッキリ。
甘いお菓子も美味。
この頃になると味覚もだいぶダメージを受け、妙に塩辛さが強調されている感じに。
なので、インスタントのみそ汁が飲めなくなり全滅。
味噌の匂いがしないのも相まって、塩辛さしか感じない。
ふりかけを持ってきていたので、お湯と弁当の白米でお茶漬けを作ってしのぎます。
SpO2が95を切りがちに。
体温はずっと37度ちょいをキープ。
咳も血痰も変わらず。
(しぶといな……)
とかおもいつつ、治ることを疑わずに就寝。
●8月14日(土)
ホテル療養の退所の目安は
・発症日から10日経過
・かつ、症状軽快後72時間経過
・そのうえで、医師と看護師のOK判断
この3点。
そして、ワクチン接種翌日を発症日とすれば今日がその10日目。
――軽快しているわけがない。
そして、ついにSpO2が90まで低下。
洒落にならない数値だけど、困ったことに全然苦しくないのです。
いわゆる自覚症状なるものが、夜中の咳くらいしかなく。
本人、ケロリとしている。
身体が雑にできていると、こういう時は便利ですが病気を治すには良くありません。
痰が血痰から普通の痰になり、少し安堵。
長丁場になることを覚悟して、風呂の残り湯で洗濯。
速乾素材のTシャツは問題なし。
普通の綿シャツが全然乾かず往生することになるのです……
少し食欲が戻ったので、夕食時に先日ゲットしておいたカップ焼きそばを作ります。
匂いはしませんが、ソースの味は健在。とても美味。完食。
数字は相変わらず悪いので、看護師さんから
『一度、先生の診察を受けますか?』
『ここ以外のホテルもみているので、順番を調整します』
『リモートでお話するので、同じ階にある診察室に移動してもらう形になります』
との提案が入ります。
もちろん、話を聞いてもらう&現状を診てもらうのはありがたいので、二つ返事で快諾。
状況が変わるとよいのですが……
●8月15日(日)
食欲がいよいよ欠片もなくなってくる。
SpO2、もはや94以上にならず。
熱は36度8分~37度4分を行ったり来たり。
でも。
相変わらず、自覚症状ナシの息苦しさゼロ。
もっとも、息を深く吸うと咳が爆発するので呼吸は浅いのですが……
そして。
夜に入力した数値を見て、看護師さんたちが俄かに騒ぎ出します。
どうやら、ずいぶんと洒落になってないのかもしれないと。
例の酸素を圧縮する装置を引きずって、何人もで僕の部屋にやってきました。
『上城さん、病院に移る準備をしてください。今手配をしていますが、ベッドが見つかり次第移ります』
『すぐには見つからないかもしれません。報道とかでご覧の通り、病床が足りていないので……』
『遠くても大丈夫ですか? 最悪、そこで手配します』
などなど。
あわただしく色々な手筈を整え。
酸素はそうこうしているうちに94まで復活したので、とりあえず吸わなくても良いだろうと。
『すみません……この機械も数に限りがありまして』
申し訳なさそうに看護師さんは言うが、こちらとしてはなにせ自覚症状ゼロ。
『いえいえ、お気になさらず』
と、それで正解なのかわからない答えを返します。
そして。
この日が……ホテル療養の最終日となるのでした。
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